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実施報告「リアルなSNSの使い方 ~発信・広報・コミュニケーションの極意。」

【第3回パワーアップセミナー】
リアルなSNSの使い方 ~発信・広報・コミュニケーションの極意。
開催日時:2018年7月7日(土)午後1時半~4時半開催
参加者:22名
会 場:かわさき市民活動センター 会議室
講 師:NPO法人CANPANセンター 代表理事
一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事
山田泰久さん
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市民活動団体は外からみるとわからない存在です。その活動は現場にいないとわかりません。
だからこそ、外に向かって自分たちの活動を可視化し、その価値を伝える必要があります。日々、様々なSNSツールで情報発信をしている山田さんに「市民活動に効果的な情報発信・広報のヒント」を指南して頂きました。
よい団体とは「よい活動」と「よい情報発信」をしている団体である。
現在国内の市民活動団体は20万あり、そのうち法人格をもった団体は12万あるそうです。どんなに良い活動をしていても、自ら発信をしないと気が付いてもらえません。
市民活動団体は、地域を伝えるメディアの役割も持っています。活動している側にとっては当たり前の情報が、受け手にとってはとても貴重な情報だったりします。「課題をいかにわかりやすく伝えるかが重要」とのイントロダクションで講座が始まりました。


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★なぜNPOが情報発信するのか?
団体が情報開示・情報発信をする意義は、地域に情報を提供し、自分たちを見つけてもらうことにあります。しかし、誰もがNPOが地域で活動している現場に行かれるわけではありません。
そこで、自分達が活動をしている地域の情報や、そこでの活動の専門性を言語化して「可視化」し、自分たちの存在を「価値化」して伝える必要があります。ただし、NPOの活動に対する共感のポイントは、受け手の立場によって異なりますので「届けたい相手によって見せ方を考える必要がある」とのお話でした。
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ここで、市民活動に効果的な情報発信・広報のヒントのコンテンツに入る前に、前後の座席でグループになり、自己紹介及びどんなツール(ネットでも紙でも)でどのような内容の情報発信をしているかのワークを行いました。
 情報発信を行うさいは、受けとる対象がどのようなツールを使っているかを考える必要があります。
また、インターネットで発信する場合、自分が生活において普段どのような立場(情報収集・コミュニケーション・楽しむ・情報発信など)で使用しているかを認知することも大切です。
★NPOの情報発信の大前提を確認する
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情報の受け手は「関心のあるものしか見ない」傾向にあります。
NPOの情報発信は自分達が伝えたい情報よりも、受益者が知りたい情報を届けることが大切です。
情報はまたたく間に全市や市民には届きません。そのためには、まず届けたいターゲットを決め、スタッフ間で情報を共有します。その後、一人の広報マンとなりスタッフが個々で発信することが有効です。スタッフ個人が身近な人に発信して声をかけることで、ピンポイントで情報が届いたり、相手が参加しやすかったりします。
NPOにとっては当たり前のことでも、普通の人にとってはとても貴重な情報だったりします。「情報の価値は受け手が決める」という前提で発信を考えることが大切と教えて頂きました。
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1)インターネットとSNS
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まず、自分がどのツール(スマホかPCか)・どの手段(HP・ブログ・SNS)で情報発信するか、受け手はどのツールや手段を使うことが多いかを考える必要があります。
情報発信するさいに意識する必要があることは以下の5項目です。
1)アプリの多機能化(動画やメッセージ機能がセット)
2)動画の多様化と当たり前化
3)3画面(PC画面/スマホのWeb画面/スマホのアプリ画面)
4)音声入力の活用
5)個人の発信
世の中の方向性は、何かを調べるときもコミュニケ―ションツールとしても、スマホが中心になってきており、PCで情報をあげた場合は、スマホの画面でどう見えるかを意識する必要があります。
さらに情報流通として押さえるポイントは、情報の届け先】世代×属性×嗜好、【ツールの用途】情報発信、情報収集、コミュニケーション、【コミュニティの特性】所属、興味関心、友達、であり「相手のライフスタイルを考える」といった点を意識すると良いとのことでした。
2)今どきのSNS事情
WEB周りで押さえて置くべきキーワードは以下の3つです。
①デジタル・マーケティング= WEBやSNSを活用して、寄付やボランティアを集める
②#(ハッシュタグ)= 趣味や関心でつながる情報の拡散
③クラウドファンディング= 資金調達と後方を兼ね備えたツール
平成29年度版情報通信白書(総務省)によると、スマートフォンの個人所有率は7割。SNSツールとしては、3人に1人がなんらかのツールを使用しており、4人に1人はLINEを利用している状況です。
また、若い年代ほどTwitterの利用率が高い傾向にあり、SNSは即時性効果が高いことが特長です。
ここ2~3年における山田さんの覚知として
①ソーシャルメディア・SNSによって、情報発信の主体が個人へ
②情報の発信者と受信者の境目がなくなった
③年代、ライフスタイルによってツールや情報源が分散化している
④インターネットは情報発信ツールから総合的ツールへ
⑤無料、もしくは安価に情報発信ができるようになった一方で、発信の質、量、スピードのバランスが求められている
⑥今までできなかったことが出来る
があげられるそうです。
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情報発信における各サイトの使い分けは以下の4種類です。
①ホームページ… 様々な情報発信のポータルサイト/ネット上のパンフ
→支援してもらいたい人・支援している人を切り分ける必要がある。また顔写真を載ると良い
②ブログ… 団体として活動の記録を残す/「今」の活動を知ってもらうベストなツール
→写真1枚と300文字程度で発信
③Facebook… 個人のネットワークを広げる便利なツールとして活用する/団体なら「Facebook広告」
→個々のハイライト機能の設定により一生懸命発信しても届かないことが多いため、シェアして多くの人に見てもらうなど工夫が必要
④Twitter… 団体としてのお知らせ情報を流す/今、一番使われているSNS/個人では、情報収集のツールとして活用する
→場所を問わずリアルタイムで見るツール。リアルタイムの拡散手段として考える
また、LINEについては、メールの代わりに使う、ボランティア・市民活動団体でLINEグループを作り情報を共有するなど、今後の活用が期待されるとの紹介がありました。
3)市民活動のための情報発信のコンセプト
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まず「共感」と「問題定義」のバランスと考える必要があります。共感は顔が見える関係性、問題定義は地域メディアの役割になります。
★発信内容の3つのポイントは…
①共感
団体の活動を知ってもらい、その必要性を理解してもらう/活動にかかわる人に興味・関心を持ってもらう
②信頼
団体が「あやしくない」ということを証明する/団体がより効果的に活動できるということをイメージさせる
③問題提起
知られていない地域や社会の状況や課題を伝える/地域や社会を変えるための提言を行う
★共感に関する基本キーワードは…
①追体験と感情移入、②新しい価値と今まで知らなかった社会課題、③社会と個人の変化、蓄積型と一発型
★信頼に関する基本キーワードは…
①組織概要、事業報告、決算の3点セットは必須、②過去情報と最新情報が掲載されている(少なくとも3カ月以内に更新されている、③団体のネットワークの可視化(外部の団体との連携実績や助成金実績が信頼度向上)
★問題提起に関する基本キーワードは…
①マスメディアが伝えない地域の状況や社会の課題を伝える、②課題を伝え、解決策を提言する、③声なき受益者の代弁者、④見えないものを可視化する、⑤事業を通じて見えてきたものについて発信する、
⑥知ってしまったものの責任→活動するのと同時に情報発信
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★NPOの情報発信とインターネット
2018年における情報発信手段の半分は紙、半分はインターネットであり、紙もインターネットもそれぞれ大事だそうです。紙中心の人にとって紙情報がなければ、インターネット中心の人にとってネット情報がなければ、情報が存在していないのと同じことです。「情報を届けたい人に応じて、ツールを使いわけざるをえない時代」と言えます。
インターネットを使うメリットは、①タイムリーに情報を伝えたい ②情報を蓄積できる ③情報を待っている人がネットの先にいる、の3点です。さらに、情報を蓄積することで、インターネットで見つけてもらいやすくなり、キーワードで検索してもらう時にも有効です。
例えば、川崎市の〇〇区で「焼肉屋に行きたい」とき、最初に「地域の情報」から「キーワードで検索」します。インターネットで情報を知りたい人は、まず「そのものを知りたい」次に「地域の情報を知りたい」というように細分化します。
いま求められているのは、「分野×地域で一番詳しい団体」です。地域で一番の専門性を売りに、初心者でもわかりやすい基本的な情報発信をすることが望ましい、とのお話でした。
★団体の情報発信のコツは
①定期的に継続的に発信する、②なるべく手間をかけずに発信する、③分業体制を作る(文章を書く人、
写真を撮る人、サイトにUPする人)、④紙の会報誌等の原稿をネットにも流用する。です。
さらに、これからは「QRコード」をつけることも必要なポイントだそうです。
4)SNSだからこそ個人と組織の情報発信
★NPOとしてソーシャルメディアへの対応は
①個人の顔の見える情報発信、②団体と個人を組み合わせた情報発信、③団体スタッフや支援者に情報を拡散してもらう、④ネット上での情報拡散を意識した情報発信、⑤積極的な情報収集(団体のことやトレンドについて)、⑥ネット上でのコミュニケーションの方針を決める、⑦個人がコミュニケーションする場を借りているという意識、⑧各ツールの特性を常に研究する、⑨ソーシャルメディアを意識したホームページの構成、です。
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NPOの情報発信の基本はホームページとブログです。
ブログに活動の記録と発信情報を蓄積していくFacebookやTwitterは、情報拡散と接触回数の増加を目指します。Facebookを積極的に活用したほうがよい団体の条件として、①全国的な知名度がある、②団体関係者のFacebookの友達の平均が100人以上、③情報発信のターゲット層やイベント参加者が20~30代中心、④頻繁にイベントを開催する、などがあげられるそうです。
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NPOのWEB系発信ツールは、団体が情報を蓄積し個人がそこから拡散するという流れになります。
情報発信力を高める重要なポイントに広報体制の構築にありますが、アップしたい情報の年間スケジュールと月間スケジュールを作り、計画化することが大切との説明がありました。
イベントに関しては、実施後のイベント報告が重要であり、アンケートをとった場合は、そこに書かれた良いコメントを掲載してアピールすることも、次回の集客につながります。
山田さんは大学生を含め若い世代と交流する機会が多いそうですが、特に若世代に情報を届けたい場合は、「スマホ使用が前提のモバイルファースト」「SNSを使う時はWEBではなくアプリで見ることがほとんどであることを前提に考える必要がある、とのお話がありました。
彼らがイベントや活動に参加する場合は、自らネットで情報を探すわけではなく、友達から誘ってもらって参加するケースが多いそうです。従って、団体が若者に発信するよりも「若者から若者へ情報を届けてもらう」手法を考えることが効果的とのことです。SNSのツールは「Facebook」などよりも「Twitter」を活用することを意識することがポイントです。
情報発信力を高める秘訣は、以下の4点です。
2×3=6つの団体を見つけ、情報発信のテクニックを学ぶ
・同じ地域で情報発信の上手な団体を2つ
・同じ分野で情報発信の上手な団体を2つ
・寄付集めやサービス提供など、情報発信の目的が同じ、情報発信の上手な団体を2つ
つまり、他の団体の良い所のマネをして勉強するということです。
②情報発信については、地域特性、分野特性、目的特性の3つの視点で見ることが大事
ターゲット層を意識する
仮説と実験と分析と改善を繰り返す
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最後に、NPOのブログについての説明がありました。
NPOのブログによる情報発信で需要なことは、①広告がつかない(団体の主義主張と違う広告が出てしまう恐れ。例:拒食症の問題を取り組んでいる団体なのにダイエット食品の広告が出てしまうこともある)②スマホ対応になっていること③無料でつかえる、の3点です。
ただしブログはSNSと違って「半年間継続して発信することでようやく効果が出てくる」漢方薬のようなものです。ブログで発信するさいに意識することは、①ブログをやっているのを知ってもらう、②ブログを継続して定期的に更新する、の2点です。
インターネットの情報発信は気軽にできる反面、そのコツを知らないと情報発信している意味を成しません。3時間半、山田さんの経験に基づく貴重な情報とアドバイスが盛り沢山の講義になりました。
【アンケートから】
「SNSの今がよく分かりました。」
「情報の受け手、目線の大切さ」
「自分のイメージしていた媒体と実際が異なっていたため、とても参考になりました。」
「山田さんの説明の仕方がわかりやすいです。具体的に使える情報と説明が必要な情報に分けられていてよかったです。」
「受益者を意識した情報発信は心がけていたつもりだったが、より気をつけようと思った。そんな狭いテーマでよいのか?と考えたこともありましたが、情報伝達の階層構造をきいて安心しました。相手のタメになる情報発信=「広報」の観点を心がけたいです。届いた相手を意識して言葉選び、ツール選びしていきたいです。」
「基本をしっかり教わることで、発展していくために必要なものが具体的によくわかる」
「お金をかけずに工夫できる広報のポイントや情報がたくさん紹介されていてよかったです。」
山田泰久さん
NPO法人CANPANセンター 代表理事
一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事
1996年日本財団に入会。2014年4月、日本財団からNPO法人CANPANセンターに転籍出向。日本財団とCANPANセンターが合同で実施する、市民、NPO、企業などの活動を支援し、連携を促進するソーシャルプロジェクト「日本財団CANPANプロジェクト」の企画責任者。
主に、NPO×情報発信、ソーシャルメディア、オンライン寄付、助成金、IT・Web、ノウハウ、ネットワーク、出身地などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っている。

(C) 2022 公益財団法人かわさき市民活動センター 
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