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【実施報告】初めての人でもきっとわかる団体のための会計(基本)

【第8回パワーアップセミナー】
「初めての人でもきっとわかる団体のための会計【基本】」
開催日時:2018年1月20日(土)午後1時半~4時半開催
会場:川崎市総合福祉センター (エポックなかはら)5階ボランティア交流室
参加者:18名
講師:上田誠税理士事務所 上田 誠さん
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「初めての人でもきっとわかる団体のための会計【基本】」は、1)ほとんど会計について知らないのに団体の会計担当になり困っている、2)団体を立ち上げたけれど「帳簿」や「簿記」が全く分からない、3)なんとなく団体の「会計処理」をやっているけれど、根本的なところで「会計」を理解していない、といった人に向けて、初めての人には「会計の基礎」が理解でき、ちょっと知っている人には、「会計」について復習しつつ、自分が解っていないポイントを知ってもらう、といったレベルを目標にしました。
 今回のセミナーコンテンツは「初めてでもわかる会計処理の基本のキ」と題して、1)会計の流れとルール、2)帳簿、3)決算報告書、4)複式簿記入門の組み立てになっています。各コンテンツの具体的な参考資料は、総務省「コミュニティ組織のガバナンスのあり方に関する研究会」(平成22年3月)のコミュニティ団体運営の手引きを使用しました。


 一口に団体といっても「法人格をもっている団体」と「法人格をもっていない団体」があります。まず、それぞれにどのような団体があるかをチャート図にした説明から始まりました。
今回の受講生は、「会計の基本」ということで、任意団体に参加されている人が多い傾向にありましたが、比較的設立して間もないNPO法人の人やプロボノをしている人も見られました。法人格の有無を問わず、会計処理における基本的なルールは同じです。
 会計事務の1年の流れは下記の図になります。
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1)会計の流れとルール
 団体を設立したら、最初に「会計のルール」を作成する必要があります。
「会計のルール」は、団体の財産の管理・帳簿の取り扱いについてのルールを決めることであり、会計処理規則を作成することです。団体の『お金』は団体を構成するみんなの財産であり、団体全体で管理するものです。お金の管理、集金、支出、備品管理、帳簿について、団体でルールを決め、きちんと管理することが大切です。
 既にこのルールができており、前任者から帳簿、決算報告書、通帳、印鑑などを引き継ぐ場合は、預金残高と決算報告書の金額が一致しており、現金は引継前に口座へ預け入れ、現金残額はゼロにしておくことが望ましいとの説明がありました。
 通帳と印鑑は厳重に保管しますが、盗難や紛失のリスク分散として1人で管理せずに別々の人が管理し、安全で正確な管理、管理の透明性といった意味でも、複数の人が管理することが大切です。
 次に会費の集金のルールを決めることも重要です。任意団体には町内会・自治会なども含まれるため、年度途中の転入・転出の取り扱いや、集金方法のルールを決めることで、町内会・自治会の会費集金を装った詐欺事件を防止できます。会費として集めたお金は団体のお金であり、個人の財布と団体の財布を明確に区別する必要があります。また、会費を払った会員には、その場で領収書を発行します。
 その後、集金の帳簿を付けて二重集金や集金漏れを防止します。集めた会費は速やかに金融機関の講座へ預金をして記録を残すことでトラブルを防止します。
 「支出の管理」については、支出が団体のルールに沿っているか、団体活動に必要かを確認します。支払いの場合は、必ず領収書をもらって保管しますが、宛名は「上様」ではなく「団体名」で書いてもらい、購入した物や理由をメモすると、帳簿記入時に役立ちます。自販機や慶弔金など、領収書がない場合は、出金伝票またはメモ(日時・用途・金額・支払者名記載)で代用することが望ましいとのお話がありました。
 講師に謝礼金を支払い講師が領収書を用意していない場合などは、必ず団体が用意した領収書に署名・捺印をしてもらう必要があります。
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2)帳簿
 「帳簿」は毎日のお金の出入りを記録する書類です。現金出納帳は日々の現金の出入りを管理するためのものです。現金出納帳は入出金の都度、その日のうちに収入・支出を記入し、領収書はノートに張り付ける等で保管します。現金出納帳は、毎月または団体が決めた期間ごとに集計し、実際の現金残高と帳簿の残高が一致しているか否かの確認をします。
 実際の現金残高と帳簿の残高が1円でも異なった場合は、一致するまで原因を調べます。残高が合わなかった場合は、帳簿上、現金過不足勘定を使い実際の現金残高に合わせ、原因が判明しなかった場合は、決算処理で雑損失勘定、雑収入勘定に振り替えるとのアドバイスがありました。
また、表計算ソフトなどを使用しPCに帳簿を置く場合は、パスワードを設定する等、情報の管理に注意する必要があります。
 団体の会計は大きく分けて「事業費」「管理費」があり、区別をして処理する必要があります。
 「事業費」は団体が目的とする事業を行うために直接要する人件費やその他の経費です。例をあげると、事業を遂行するための人件費、チラシ・ポスターの印刷費、講師への謝金、会場の賃借料、Tシャツ等の仕入・製作費など、明らかに事業に関する経費として特定できる金額などが該当します。
 「管理費」は、団体の事業を管理するための費用で、総会・理事会の開催運営費、会議や懇親のための飲食代、管理部門に係る役職員の人件費(会計、監査等)、管理部門に係る事務所の賃借料、水道光熱費、会報発行費など、明らかに管理部門に関する経費として特定できる金額になります。
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 人件費、事務所の賃借料、水道光熱費、通信費など、事業部門と管理部門の共通経費がある場合は、按分して合理的に算出する金額となります。按分方法として、「従事割合」、「面積割合」、「人件費割合」、「直接費割合」など、各団体の活動の実態を反映するような割合を使用するとの説明がありました。
3)決算報告書
 決算の手続は、帳簿を締め切り年度末現在の現金・預金残高を確認し、科目ごとに1年間の収入、支出を集計して合計額を算出し、収支計算書を作成します。また予算書、必要に応じて財産目録も作成します。
「収支計算書」は、1年間の収入と支出を会員に報告する書類です。会員から預かったお金を団体の目的に沿って支出していたかを年度末の総会で説明し、会員の承認を得るために必要になります。
 「予算書」は1年間の活動の予定を金額で表した書類であり、過去1年間の決算報告書や活動等を参考にして作成します。「財産目録」は、年度末現在の財産(現金・預金、備品、建物、借入金等)を記載したものです。会計監査・総会が無事終了し、後任への引継ぎする場合は、会則・会計ルールの説明を行い、現金は、引継ぎ前に口座へ預入して現金残高はゼロにしておくことが望ましい、とのお話がありました。
4)複式簿記入門
 簿記とは「帳簿に記録すること」です。単式簿記は、取引を1科目に絞って記録する方法で、現金の流れだけを表すものですが、複式簿記は、取引両面を記録する方法であり、現金の動きと、現金が動いた原因も表す方法です。「複式簿記」は、仕訳の構造が(貸方・借方)になりますが、簿記が初めての人にとっては、「収入」と「支出」に関して、何をどちら側に記入すればよいか迷ってしまう人が多くみられるのがこの「仕訳」です。
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 基本的に、現金が増える「収入」は「借方(左側)」になり、現金が減る「支出」は貸方(右側)になると覚えておくと良いとのアドバイスがありました。仕訳の科目(年会費・消耗品・人件費など)については、団体の実情にあった科目を決めることがポイントになります。
 最後に「未収金、未払金、前払金、前受金、立替金」の考え方ついて一通りの説明がありました。「未収金」は3月末までに活動は終わっているが、まだ入金がない場合(3月決算法人)、「未払金」はすでにサービスを受けているが、支払は4月以降(3月決算法人)に行われる場合、「前払金」は、お金はすでに支払っているけれど、そのサービスはまだ受けていない場合、「前受金」は、お金はもらっているけれど、まだサービスの提供を受けていない場合に相当します。
 「未払金計上」の事例では、3月決算法人が3月に利用した会場費50,000円について4月に支払う場合についての紹介がありました。基本的に当期の費用として計上。決算時は、現金を支払っていないため未払金を貸方とし、現金を払った時点で未払金を借方にします。
 今回のセミナーは「団体のための会計【基本】」ということで、まず会計の基本的な知識と考え方について知ってもらうことが一番の目標でしたので、講師の上田さんが、それぞれの科目で具体的な事例をあげて分かりやすく解説してくださいましたので、より理解が深まる講義となりました。
【参加者アンケート】
「初心者にもわかりやすく、理解できました。」
「今行っている業務を復習しながら聞くことができ、複数簿記も勉強できました。」
「団体のリスト作成の参考になりました。」
「青色帳簿タイプを活動に合わせて合理的に作成していく方法を、セミナーでの学びを通じて気づくことができました。ありがとうございます。」
「普段、こづかい張程度に収支を記録しているので、正しいやり方を聞きたかった。」
「流れがわかり、細かい実務に沿った質問ができて良かった。」
「初心者向けとあるように入門編なので、知識の復習ができて良かったです。」
「身近な例として、町内会の会計を取り上げていただいたこと。」
<講師紹介>
一般企業、会計事務所勤務を経て、平成22年に税理士登録・個人事務所開業。法人・個人の会計税務顧問のかたわら、青山学院大学講師、一般企業・NPO法人・個人事業主を対象とした会計税務セミナーや相談会にも関わっている。

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