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U50   第14回 千葉 駿 さん

アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。

千葉 駿 さんプロフィール

千葉さんの写真

第14回 千葉 駿(ちばしゅん)さん 
Global Café×オリパラ リーダー 
麻生区在住

「Global Café(グローバルカフェ)×オリパラ」とは

千葉駿さんの写真

Language Exchange(言語の交換:外国語を学んでいる日本人が、その言語を話す人に教えてもらう代わりに、その人へ日本語を教える)を目的にしたコミュニティです。英語や日本語・その他の言語で国際交流を図りたい人々が集います。普通の国際交流カフェと違うのは、2020年開催のオリンピック・パラリンピックに向けたボランティア活動やイギリス代表のホストシティとなる川崎市の企画(事前キャンプの受入れ、また人的・経済的・文化的な相互交流を図る)にも参画する予定があることです。

団体のロゴマークは、私の6歳の娘が考えました。色々な国の人がカフェに一緒に集まるという意味で、コーヒーカップの周りを各色で繋ぎ、真ん中に「グローバル」=「国際的な」の意味の「G」を描きました。

きっかけは

グローバルカフェのロゴマークとかわさきパラムーブメントのロゴがついたポスターの写真

2017年仕事の関係で1年間、家族とともにイギリスで暮らしました。2人の子どもたちもまだ1歳、5歳と小さく、最初の2ヶ月は大変な思いをしました。特にイギリスの教育制度は日本と違って5歳から小学校がスタートし、学校選びも学区のしばりがないため、親が選択しなければなりませんでした。家から近い学校はすべて定員オーバーで、バスを利用しなければいけない小学校に申し込みをせざるを得なかったのですが、その学校の校長先生や受付の方が、思った以上に丁寧に対応してくださいました。また近くの教会の日曜学校でも、私たちにはもちろん、子どもたちにも、みんな親切に接してくれました。周りにまだ日本人の知り合いも少なく、生活や文化の違いに戸惑うことも多かったので、本当に助かりましたし、嬉しかったです。

その甲斐あってか、英語が話せず、約二ヶ月毎朝学校に行きなくないと涙ぐんでいた長女も、クラスメートの温かいケアのおかげで次第に学校にも馴染んでいきました。あとでわかったのですが、クラスメートの一人のママは、自分の子どもにも「新しく来た日本人のお友だちにも親切にしてあげるのよ」と、そっとお菓子やぬいぐるみをプレゼントしてくれていたようでした。本当に人の優しさや真心に触れた経験でした。その時のお友達とは、いまではクリスマスカードのやりとりなどを行っています。ちなみにですが、子どもの適応力とは本当にすごいもので、半年後には私よりも流暢に英語を話すようになり、一年後には娘に発音を直されるようになり、立場は完全に逆転していました(笑)。

言葉の壁や習慣の違いなど、色々な苦労はあっても地元のコミュニティや小学校の親との交流に参加することで孤立することなく、充実した海外生活を送ることができました。このとき、日本に帰国したら私たち家族のような、異国で戸惑う外国人やファミリーに何か手を差し伸べたいという考えがすでに芽生えていました。

そして帰国後、偶然にも川崎市が2020年のオリンピック・パラリンピックでイギリス代表のホストシティになるという情報をキャッチし「何か協力できるのでは、そして自分達がイギリスで受けた恩返しができる良いきっかけになるかもしれない」という思いに駆られました。このような2つのきっかけで、近隣の外国人と日本人が「言語の交換」を通して交流を図るコミュニティと地域でできるオリンピック・パラリンピックへのボランティア活動という2本柱で、家族とともに活動に取り組むことにしました。

活動開始はプチカフェから

日本人と外国人が室内で話をしている様子の写真

まずは市の推進する「かわさきパラムーブメント」の一環の「かってにおもてなし大作戦」というイベントに参加することにしました。そのイベントでは自分の好きなことを市民に対して企画するというもので、私は「言語の交換」を提案し、仲間を募りました。近所に偶然出会った公園のパパ友であるアメリカ人の友人や、オリンピック・パラリンピック推進室の方に紹介してもらった英語の先生であるイギリス人、たまたま麻生区に最近引っ越しをしてきた日本人の友人夫妻、イギリス滞在中の日本人の知り合いなどに声を掛けました。年齢層は20歳代から50歳代と幅広く、多種多様な人種と職業でまさにグローバルなスタッフがそろいました。そして、2019年3月3日、国際交流のプチ・グローバルカフェを開きました。このときの様子はタウン誌や市のホームページのイベントサイト「インスパイアー ハブ しんゆり」にさっそく掲載され、手ごたえを感じました。

その後、正式に「Global Café×オリパラ」として、チラシ配布などの宣伝をして第1回目のイベントを立ち上げたのは3月30日の「しんゆり交流空間リリオス」からです。

宣伝として、活動日は、月2回の土日、時間は2時間程度として予約不要、出入り自由、場所代と茶菓子代で会費500円{未就学児や小中高生は無料}というゆるいルールにしました。

記念すべき初回、当日の参加者は、15名あり、クチコミの力は大きいと思いました。

2時間の内容は基本が、「ランゲージ・エクスチェンジ 言語の交換」ですから、ダラダラと話すのではなく、20分ずつ区切って、日本語のみの時間と英語のみの時間を交互に自由に会話を楽しみました。丁度、当日は「満開の桜」の話題で盛り上がり、解散後も麻生川の桜祭りまで皆で歩いて花見を楽しみました。初回から和気あいあいでした。もちろん、日本語と英語を半々に話しながら歩きました(笑)。

当日、自分が一番気をつけたことは、会話の輪が日本人と外国人が片寄らないように席を決めることでした。そして、タイムキーパー、お茶出しなどの係りに徹し、会話の中には入りませんでした。参加してくれた子どもたちの様子を見守りつつ、幹事役として会がスムーズに進行するように、回りの雰囲気に気を配りました。妻もベビーカーに第三子の赤ちゃんを寝かせながらの受付係りをしていましたので、私たち夫婦は英語を話す機会がほとんどありませんでした(笑)。

活動を通して

英語でスケジュールが書かれたホワイトボードの写真

当日の2時間の言語交換スケジュールはうまくこなせたと思いました。日本語のみの時間、英語のみの時間を設け強制的に話をする環境を作ったこと、また交流も目的なので席替えも意図的に組み込みました。事前にこの構想が練れて準備ができたのは、自分のイギリスでの言語交換の経験が役立ったからだと思います。イギリスに渡った当初は英語に、まだまだ苦手意識がありました。なので、現地で偶然知り合いになった日本に留学経験がある大学生とペアを組み、言語交換の相手になってもらいました。私が20分間、英語を話す時は大学生が英語の先生に、大学生が20分間、日本語を話す時は私が日本語の先生に、といった具合に、交互に時間を決めて語り合いました。回を重ねるごとに仲良くもなって、自宅に招いて妻の日本料理をご馳走したり、反対に大学生の実家に家族みんなで遊びに行かせてもらったりなど、年齢は違っても言語交換を通しての関係性で心が繋がり、本当に楽しいイギリスの思い出になっています。

当日の参加者の感想は、「自己紹介や趣味の話ができて、楽しかったし良い経験ができた」、「久しぶりに英語を話す部分の脳を使いました」「次回は『食に関する話題』など、トピックカードを使ってもっとコアに話したい」などという意見もでました。

印象に残っていることは、最近運営メンバーに加わってくれた親子の姿です。まだ日本語に不自由を感じる小学校の女の子が楽しそうに日本人のお友達と遊んだり、母国語である英語を使って会話の輪に入って話をしたりする姿を、お母さんが温かく見守っている様子を見て、「あー、こういう場があって、役に立つことが出来たかなぁ」と感じました。言語や生活習慣に困っている人が気軽に立ち寄れるような場を提供したい、こういう場があることを知ってほしいという自分の理念が、ひとつ形になったかなと感じました。その時、この活動に取り組んでよかったとしみじみ思いました。

どんな子ども時代を

英語と日本語の絵本が机に並んでいる様子の写真

生まれは洋食器で有名な新潟県の燕三条です。今でこそ、仕事で英語を使いこなしていますが、小さなときからサッカーに夢中、小・中・高・大学とチームのキャプテンかサブキャプテンを務め、英語なんか大嫌いでした(笑)。その反面、歴史は好きでした。日本史、世界史を問わず、親が漫画の偉人伝や歴史本を何十冊も買ってくれるので読破しました。今でも、夏目漱石の「こころ」が好きで、何かあるたびに本棚から取り出して読んでますね。

大学では経営学を学びました。考えてみたら、サッカーも大学での勉強も、今の活動の基礎になっている気がします。サッカーは1つの目標に向かって、メンバー皆が達成感を味わえる醍醐味がありましたし、大学で勉強した組織心理学が生かされていると思います。

昔のサッカー少年は今や、毎日の早朝マラソンランナーです。イギリスでも走っていましたし、フルマラソンも出場しました。

自分にとって英語とは

イベント参加者の集合写真 日本人、外国人、大人、子どもが25人ほど。

不思議なことに、英語嫌いだった自分が必要に迫られて習得したら、今や、英語が自分のライフワークになってしまいました。英語を使うことによって、仕事の幅が広がりました。とにかく情報量が違います。そして、自分のネットワークを広げるツールだと思っています。ただ僕の英語は、完璧などではなく、文法も間違って使うことがしばしばあります。でも大切なことは自分の意志をあらわすこと、多少の間違いがあっても通じることをイギリスに行って学びました。外国人の方が日本語を話すとき、多少間違いがあっても日本人であれば理解できると思います。それと同じです。それがわかってからは多少の間違いを気にしなくなりました。

イギリスに行く前と帰国してからは、明らかに生活の変化を感じます。何よりも時間の使い方が有効になったと思います。以前は平日は仕事一辺倒、土日に家族サービスのバタバタしていた日々が、帰国後はこの活動で地域とかかわることにより、ライフスタイルが豊かになりました。自分のイベント開催の準備で、妻や子と会話が平日でも密になりました。最近は活動に夢中すぎると逆にお𠮟りもありますが(笑)。

仕事も英語を通して人の輪が広がり、友人や同僚を自分の土日のイベントに巻き込みたいと思っています。

将来の夢は

より多くの麻生区の人々や、あらゆる国の人が我々のコミュニティに訪れてほしいです。今年6月にはラグビーワールドカップが開幕します。市の「オリパラ推進室」からイギリスチームへのボランティアのオファーが来ているので、何か協力したいと思っています。また、自分の会社もボランティアを推進する制度があるのでこれも何かに役立てたいですね。

自分が日本に対して誇れることは「日本人は真面目、勤勉、町が綺麗、治安が良い」ということです。海外にいったことで、改めて日本の良さ、日本人の良さに気づいたと思います。

これから活動を始める人へのメッセージ

私の好きな言葉は「失敗は成功の母」です。自分はチャレンジが好きな分、失敗も多いですが、これは次に繋がると思っています。失敗を繰り返しながら活動を進めてみてください。そしてイベントの宣伝は、チラシやフェイスブックよりクチコミです。人のネットワークが大切です。そして組織化する上で、人と人とのコミュニケーションを大切にしてください。SNSの時代ですがグループよりも「個別に、密に」が大事だと思います。ここにきて、学生時代に学んだ心理学が役立っていますよ(笑)。

4月21日の日曜は、新ゆりアートパークスで第2回目を、AirGreenさんと特別共催します。とりあえず、ふらっと遊びにきてください。雨天では中止になってしまうのですが、晴れたら気持ちの良い芝生の上で、子どもたちも交えて一緒に言語交換を楽しみましょう!

お問い合わせ

フェイスブックページ:https://www.facebook.com/globalcafexoripara/


平成31年4月6日取材 レポーター 町田香子

次回のエースは田中 ミズキさんです。

田中 ミズキさんへ一言

千葉さんの写真

「勝手におもてなし企画」でお知り合いになった田中さん。しんゆり美ママプロジェクトのリーダーとして、地域のママさん達を元気にする活動を行っているそうです。活動のきっかけや活動状況など、そんなお話が楽しみです。

バトンを受け継いで 千葉 駿 さんへ一言

田中みずきさんの顔写真

川崎市のイベント「かってにおもてなし大作戦」で初めてお会いしました。英語が堪能、さわやかで人あたりがスマート、そしてお子さん3人の優しいパパの雰囲気が印象的です。Global Café×オリパラの広がりも素晴らしくて、とても勉強になります。
これからも同じ麻生区繋がりで、ともに交流していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

(C) 2022 公益財団法人かわさき市民活動センター 
市民活動推進事業