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U50   第16回 小野 さくらさん

アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。

小野 さくら さんプロフィール

小野さくらさんの写真

まごごろキッチンプロジェクト 代表
麻生区在住

「まごころキッチンプロジェクト」とは

小野さくらさんの写真

立ち上げは、2018年4月です。きっかけは、2018年2月の福井県を襲った大雪のニュースでした。国道8号線で3日間にわたり、立ち往生するドライバーに、国道沿いの店主が温かいラーメンを無料で提供したとの報道に釘付けになりました。というのも、夫が川崎でラーメン店を経営していますから「私たちも、その場にいたら絶対、何かしてるよね」と夫婦で話をしていました。そこで、災害時に飲食店が「できる範囲」での食べ物や居場所の提供、そして「まごころ」の提供が分かるステッカーを作って店先に貼れば、困った人たちへのお手伝いができるのではと思いついたのです。

たとえば、近所に避難所はあっても行くことをためらう人の中には赤ちゃん連れのママや高齢者、または体の不自由な人々がいるかもしれません。その行きづらい人々に、近くにある飲食店なら気軽に寄れるというスタンスでサポートできます。また、ひとりでお留守番をしている子供たちが、ステッカーが貼ってあるお店で、お父さんお母さんの帰りを待てますし。ステッカーを見て来た人々に「災害の情報がわかるまで、うちの店でお茶でも飲んで待っててよ」と声かけしてお互いが心細さを振り払えたら、大変な状況だったとしても、みんなで頑張れそうな気がします。災害時に生まれた発想ですが、普段から店と人が優しく繋がっていたいなあと思いました。

この「まごころキッチンプロジェクト」と名付けた意味は、飲食店として次の営業日分の食材があるからこそできる活動ですが、料理や飲み物が行き渡る人数や配る量にも限りがあります。もしかしたら、自分の店も被災している可能性もありますが、できる限りのことを精一杯「まごころ」をこめて動きたいと、この団体名に決めました。

メンバーと活動

まごころキッチンメンバー集合写真

メンバーは私たち夫婦と知人のカフェ経営のご夫婦と飲食店アドバイザーさんの5人です。メールでの連絡以外に必ず月に一回は、顔を見ながらの打ち合わせをしています。

私たちの腕の見せどころは、「『緊急災害時飲食提供店』と書かれたステッカーを貼る店舗やサポーターをいかに募るか」だと思っています。ここでも私たちメンバーが「まごころ」を込めて、共に助け合う大切さを説きステッカー店舗が増えればそれだけ、この活動も拡大していくと信じています。

活動開始から1年経ちましたが、色々なイベントに参加してきました。2018年秋には麻生区内の2校の小学校総合防災訓練に参加しました。最初の小学校では、ビニール袋からのカッパ作り、ペット防災についての話や私の避難リュックの中身などを披露し、2校目はアルファ米を粉にしたお汁粉を作り試食しました。温かい食べ物は心が満たされますから、災害時にカセットコンロやボンベが必要不可欠とアドバイスしました。

その後、日刊紙からの取材のお声もかかり記事が掲載されました。11月には、熊本県地震の時に現地の方とやりとしをし、物資を送ったり募金活動をした方を講師に呼んで講演会を開きました。そして今年の春には中原区で鍋とポリ袋だけを使っての防災食育教室や、今年8月には黒川青少年野外活動センターでも防災イベントの開催を予定しています。

活動から学んだこと

非常食を試食している写真

今年(2019年)2月にかわさき市民活動センターで行われた「かわさきボランティア・市民活動フェアー」である「ごえん楽市」に、アルファ米で作った5種類の味のおにぎりの食べ比べの試食をメインに参加しました。実はこのとき驚いたことが2つありました。1つは、アルファ米に関しての認知度です。今やアルファ米は、防災用非常食として備蓄食品にまず挙げられますが、高齢者はほとんど知らなかったのです。そして、小学校・中学校・高校の生徒たちは、年度末に災害用アルファ米を学校のローリングストックの一環として自宅に持ち帰ってきますが、実際に作ってみたご家庭は数少なかったのです。

2つ目はいくら備蓄用の缶詰があっても、子どもや高齢者のような握力の弱い人たちには開けられないのです。これでは、備蓄食材はほとんどタンスのこやしどころか、「食べられないなら、命にもかかわる!」と思いました。ここで、市民の根本的な防災意識の希薄さを感じました。

川崎市はいろいろな防災情報を流していますが、それを知らなかったでは、いざというときに大変な目に遭います。それならば、市民に知らせる工夫が大事だと気がつきました。なので、今年はメンバーとともに、ステッカーを貼った飲食店を増やしながらも、地道な防災講座の開催も平行して行おうと決心しました。

たとえば、子どもに防災を教えるには、身近な生活の工夫からもできます。私は自分の5歳の子どもにも言ったのですが「寝る前には、オモチャを片付けようね。もし地震が起きて恐竜のオモチャがゴロゴロしていたら、ママは恐竜の背中のトゲトゲを踏んで足をケガして、逃げることもできないよね」と、さとすとわかってくれました。また、最高のオモチャである懐中電灯を振り回して遊んでいるときに「真っ暗なときに地震が来て、この懐中電灯が無いと、真っ暗なお部屋から逃げられないよね」との一言で、きちんと元の場所に戻すようになりました。最近では、息子が「また、ボーサイのはなし?」と言ってきたりもしますが(笑)。小さいうちからの災害時の認識は必要ですね。

私の住む麻生区は海や川からも遠いし、高台の地形ですからハザードマップを見ても、とりあえず差し迫った危険地域ではありません。だから余計、私はこの地域から災害難民や困った人は出て欲しくないと思っています。

市内のこども文化センターで、防災に関しての話を開催予定ですが、たとえ聴衆が一人でも、もちろん開催するつもりでいます。なぜなら、その一人が自分のため、家族のための「マイ防災」を考えるだろうし、考えた後には備えるだろうし、備えていけば今度は周りの知り合いなどに向けて防災発信者になれると思っているからです。

どんなライフスタイルを

防災イベントで作業をしている写真

出身は福島県郡山市です。2011年の東日本大震災のときは、仕事がある父を除いて母と弟、いわきに住む叔父一家が川崎の私の家に一時避難してきました。私が災害に危機感を持つのは、こういう経験もあるからです。大規模半壊した実家のマンションの復興は、まだまだ前途多難です。小学校・中学校・高校と、この郡山で過ごしましたから、故郷への想いも強いです。

中学・高校時代は、演劇部に所属しました。この大きくて通る声は、やはり演劇部出身とよく言われますよ(笑)。でも、演劇部では役者よりも裏方として、照明の魅力にとりこになりました。高校を卒業して、照明の専門学校に進学して、照明会社に入社しました。光と影の美しい世界をかもし出す照明は綺麗な仕事に見えるかもしれませんが、実際は大変ですよ。舞台照明などは熱いし重いし、特に野外のときは過酷です。

現在は介護士としての道を歩んでいます。この道を選んだのは、いずれ自分の親たちの介護の日が来るであろうという気持ちと、離れて暮らす親たちをケアしてくださるヘルパーさんたちとは、介護のスキルをわかってから遠距離電話を介してでも、親を託したいと思ったからです。でも、思いがけずこの介護の仕事に就いたことにより、より一層防災が身近に、そして幅が広がりましたね。高齢者や障がいのある方々に、毎日デイサービスで寄り添っているので、現状がわかるのです。

毎日の仕事と自分の活動に駆け回る忙しい日々なので、趣味であるお芝居やミュージカルにはほとんど見に行けなくなりました。元・照明係りですから、劇場に行ったら劇よりもまず、照明が気になりますね(笑)。

好きな本は、スリリングで展開の早い推理小説です。外国ならシドニー・シェルダン、日本なら警察小説の誉田哲也でしょうか。そして、好きな言葉は「一期一会」。ここで会ったも何かの縁。一生に一度の出会いを「まごころ」を込めて大切にしたい、だから頑張れるといつも心にとめています。

夫からは「いつも寝る暇が無いほど、動いているけど大丈夫?好きなことを好きなだけやれるって幸せなことだね」との言葉をかけてもらい、半分呆れながらも応援してくれます。掃除の手抜きも何も言わないでサポートしてくれ、本当にありがたい存在です。彼との結婚にも本当に「縁」というものを感じています。

今後の活動

講座で話をする小野さくらさんの写真

今、取り組んでいるのは、市民館の会議室などを借りて防災食育教室の開催、こども文化センターで小さいお子様がいるママ向けの防災講座、「はなももまごころ防災カフェ」です。特にこの防災カフェは、7月から第一木曜に、麻生区王禅寺にある「みんなの居場所・はなもも」で、災害の備えについて4回シリーズを予定しています。適切な準備や備蓄食材、トイレ等についてみんなでお茶を飲みながらお話をします。身近な人と繋がって何かあったらお互いに近くの人を助ける「互近助力」(ごきんじょりょく)のアップが目標です。皆がその力を持っていたら、災害なんて言葉が吹き飛ぶくらい、優しくて温かい世界になれますよ、きっと。

夢は、いつも笑顔でいられる人生を送ることです。

最後にメッセージを

まごころキッチンのマークの写真

これから何か活動をするのに迷いがある人には、「まずは勇気を出して、はじめの1歩を踏み出して!」と言いたいですね。私の防災講座のタイトルも「はじめの1歩」です。

忙しくて時間が無いとの理由だったら、生活の工夫次第でなんとかなりますよ。私はどんなに忙しくても、生活の中で気をつけていることがあります。それは、人と話したり、本を読んだり、テレビのニュースで気になる言葉があるとすぐにスマホにメモします。そしてあとでゆっくりとパソコンで調べて自分のものにします。自分がインプットしたものを、アウトプットするように、自分のわからない言葉を理解し、使って話すことは大切だと思っています。凄いですよ、私のスマホのメモの羅列した画面は(笑)。

どうぞ、とりあえず私たちの講座にいらしてみませんか。きっと新しい発見がありますよ。
また、ステッカーの活動にもご興味があれば嬉しい限りです。

お問い合わせ

ホームページ https://magokoro-kitchen.org/
フェイスブックページ https://www.facebook.com/magokoro.kitchen/



平成31年6月20日取材 レポーター 町田香子

次回のエースは新村 慶太さんです。

新村 慶太さんへ一言

小野さくらさんの写真

たくさんの顔を持つ新村さん。モトスミ・オズ商店街副会長、整体師だけじゃなく学校の講師やラジオまで。お仕事仲間と月一修学旅行はとっても楽しそうで、いつもいいなぁーと思って見ています。お忙しい毎日を送っているとは思いますが、早くウチのお店にも取材に来て(笑)!

バトンを受け継いで 小野 さくら さんへ一言

新村慶太さんの顔写真

オズ・フェスタで出会い、フリーマーケットのアイディアをいただき適切なアドバイスに感激しました。普段からアクティブにご活躍なさっているさくらさん、こういう方が地元を、そして川崎市を支えているのだなあと実感しています。

(C) 2022 公益財団法人かわさき市民活動センター 
市民活動推進事業