公益財団法人かわさき市民活動センター

「北村さん、あなた、障がい者の友達はいる？」。3年前、ぶつけられた質問の答えに詰まった。人事コンサルタントとして障がい者就労にも関わっていたのにだ。その人に誘われ、参加したキャンプで、初めて障がい者の友達ができた。だが、自分は彼らの才能や能力を、世の中で輝かす手段を持っていないことにがくぜんとした。
「あらゆる人に価値がある、人こそ最大最高の資産。そう本音で言える世の中を創る」。その思いを軸に北村尚弘さん＝写真＝の「4ぶんの3」の活動が始まった。完璧なもの、100％にこだわらない。「足りないくらいがちょうどいい」の心意気だ。この価値観に賛同した仲間がアイデアや知恵、技術を提供してくれた。人脈を通じ、活動のモデルとして、障がい者の手によるバッグ製造に取り組み、試行錯誤の末、今年春からネットでの販売を始めた。
使いやすく、縫いやすいデザインを考える人、格安でホームページを作ってくれる人、材料を寄付してくれる人、価値観を共有した仲間の絆が生まれている。
企業で働いていたころに比べると収入は激減した。それでも「4ぶんの3」の感覚を大切にするという軸がぶれることはない。すべての人が持っている潜在能力や可能性を信じているからだ。
（2012年11月17日神奈川新聞掲載　市民記者・佐々木直子）