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【実施報告】必ず活動が変わる!団体のための効果的な助成金活用法

【第7回パワーアップセミナー】
「必ず活動が変わる!団体のための効果的な助成金活用法」
開催日時:2017年12月2日(土)午後1時半~4時半開催
参加者:20名
会 場:川崎市総合福祉センター (エポックなかはら)5階ボランティア交流室
講 師: NPO法人CANPANセンター 代表理事
一般財団法人非営利組織評価センター 業務執行理事
山田泰久さん
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 (社福)川崎市社会福祉協議会と共催になる7回目は、NPO法人CANPANセンター代表理事 山田泰久氏を講師にお迎えしました。日本財団とCANPANが合同で実施する数々の活動支援の経験から「あなたの知らないリアルな助成金の申請と活用の話」をしていただきました。
【コンテンツ】
①リアルな助成金の活用
実際の助成プログラムの状況、リアルな助成金申請、
助成金を本当に活用するということ、それに基づいた事業づくり
②なぜ、助成金の獲得ではなく、活用なのか?
「獲得」はあくまで通過点、そのあとでどのように「活用」するか
ということが大事
③なぜ、助成金なのか?
助成金が持っている付加価値とその可能性


 講座は助成金を「生きたお金」として活用するお話から始まりました。さらに本編に入る前にインターネットを利用する意義の説明がありました。「よい団体とはよい活動と情報発信をしている団体である」ということです。
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 団体が情報開示・情報発信をする意義は、地域に情報を提供し、自分たちを見つけてもらうことにあります。NPOは全国規模で捉えると5万もあり、これは全国のコンビニと同じ数です。さらにNPOも含む一社などの法人格を持った団体は12万あり、任意団体では20万もあります。相手の立場になって考えると、ここから自分たちを見つけてもらうのはとても難しいことです。
そもそもNPOや市民活動は外から見て何をしているのかよくわからない存在です。そこで、自らを「可視化」して、活動をしている地域の情報や地域における自分たちの活動の専門性を「価値化」し、受益者に対して「言語化」して伝える必要があります。
 市民の立場で情報発信できない人に代わって発信し、専門的な情報を必要としている人に情報を届けることは、団体の活動を持続的にするための資源を獲得し、NPOセクター全体の信頼度の向上につながります。専門性をアピールすることは助成金申請時に有利であり、自分たちが日常的に行っている情報発信・収集活動においても、ソーシャルインパクト(社会的影響力)を意識して広報活動をすることが、助成金の申請にもつながります。
 本編に入ったところで助成金〇×クイズを行いました。着席した机の前後4人程度のグループになっていただき、自己紹介も兼ねて一緒にクイズの回答を考えてもらいました。アイスブレイクにもなり一緒になった人たちの交流にもなりました。
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 クイズの回答は以下の通りでした。
①申請は下手でも理解をしてもらえる。相手に伝える工夫が大切で、評価のポイントは事業の考え方を理解しているかが重要である。
②助成金によっては一部自己負担、人件費は認められない、前払いではなく後払い(後精算で残った分を返金)する場合もあり、さらに事業をすると必然的に出費がかさむことも多い。
③1年を通していつ何の助成金募集があるかはだいたい決まっており、5年くらいは変わらない。2回くらいはチャンスがあるので、いきなり申請するのではなく事業に見合った助成金を見つけることが大切である。また団体としての助成金カレンダーは、1)助成金を申請するまでのカレンダー(事業を考え資料をつくる)2)助成金をもらってからカレンダー(いつ何の事務作業が必要か)の2種類がある。
④事業に見合った専門分野に応募すれば、専門家からのアドバイスがもらえる場合がある。
⑤100万円以上は団体の事業、100万以下は団体の成長に使う。
⑥100万以上の助成は、事業が終わった後、他の地域にもそのノウハウを普及して受益者の拡大を図ることを意識する。
 特に、⑤⑥については助成金活用の考え方を変える必要があるとのことでした。
 つまり「助成金申請が上手な団体は、申請の書き方ではなく考え方を知っている」ということです。助成金は投資であり、使い切った後の成果と活用の仕組みづくりを考え、自分たちの活動は誰を支援するのか受益者を意識することが大切です。
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★助成金を審査する側の論理と申請する側の誤解
 助成金の意味は、事業の完成を助けるお金であり、団体に出すわけではありません。どんな事業を行うかが大事であり、成果を出す事を助けるお金です。
「活動」は継続されることで持続的に成果を生み出していくものですが、「事業」は一定の期間を設けて実施するものであり、事業で生み出した成果が別の成果を生み出していくものです。助成金申請とは、普段の活動全部を盛り込まず、その中から特別なものとして「事業」を抜き出すことです。助成する側は、事業に対して資金提供し、事業終了後もその資金を有効に活用してほしいと考えています。
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 ここで新たな助成金クイズと回答の共有タイムになりました。出題は「全国規模の助成プログラムについて」です。
Q1.助成金の締切が一番多い月は何月? 
→5月(予算が決まってからの募集)11月(来年4月からのもの)
Q2.助成金の申請上限額で、一番多い金額帯は?
  →100万(全国平均)
Q3.助成金の採択率の平均は?
  →32.1%
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 助成金の申請については、実績がないのにもかかわらずいきなり全国規模に応募するよりも、最初に申請しやすい30万以下の助成を受けて活動実績を残すことがポイントとのことでした。
次回に規模が大きい助成金に応募する時、審査側は団体の実績を精査するので、最初に助成を受けた実績がアピールポイントとなって評価されます。従って、助成金規模の段階を踏んで申請し実績を残していくことが重要とのお話がありました。
★なぜ助成金なのか?それは付加価値が大きいから
 助成金を申請し獲得することは、①信頼の付加価値 ②ネットワークの付加価値 ③事業づくりの付加価値 ④事業後の付加価値の4つがあります。
 そして、助成金は「お金を獲得」することが目的ではなく「助成金を活用する」という考え方から始める必要があります。助成金はもらった団体のためだけのものではなく、「団体や活動の発展を目指す」ものであり、「その成果を受益者はもちろん、広く地域や社会、他の団体に還元する」ことを考える必要があるとのことでした。
★申請と審査
 助成財団からの問いに「なぜ助成金が必要なんですか?」があります。「資金が不足しているから」という回答もみられるそうですが、「団体や活動が発展・成長していく上で必要な資金だから」が望ましい答えであり、助成金終了後については「助成金で〇〇することで、助成金が終わった後は~~が見込めます」と続きます。助成金はもらったあとにどう活用し、いかに団体の発展に活用するかが重要であり「助成金を活用してどうなりたいか」のビジョンを描くことが大切です。
 例えば、50~100万ゾーンの助成金では社会課題自体を解決する事は難しいけれども、事業を達成し継続ができて他の受益者の役に立つことはできるので、申請する助成金の規模感からできるレベルを考える事も大切とのお話もありました。
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 申請書の各項目は、自分の想いではなく相手が知りたいこと、①具体的な事実(地域のデータや課題を可視化する)や②計画に至った過程をイメージさせることを意識する必要があります。つまり、①なぜこの問題に取り組むのか、②どのように解決するのか、③誰が行なうかなどを具体的に示し、審査担当者からの共感を得る必要があります。
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 申請書をみると事業の目的と団体の目的がごちゃ混ぜになっているケースが見られるそうで、事業の目的と団体の目的が分けることが必要であり、助成金申請書に必要な「時間軸」を整理することが重要とのことでした。
 また、申請時には事務処理能力も問われるため、期限など申請のルールを守り、審査する立場の視点に立って、イメージが具体的に膨らむ事業名、審査担当者が思わず聞きたくなる質問、適正な積算と持続可能な規模感を意識することが大切です。さらに、申請する前に他の団体の事例を研究するなど、情報を収集し整理し、採択された場合は採択された理由を聴くことも大切とのお話がありました。
★リアルな事業づくり
 申請書の前にやるべきことは事業づくりであり「人」を中心にして考えます。
事業申請の形には「組織マネジメント」「活動強化」がありますが、受益者がぼんやりしていることが多いので、地域ニーズ・受益者は誰なのかを明確にする必要があるとのことでした。
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 「中高生の学習支援」を例にとると、場所づくりなど直接的に受益者に働きかけるには予算的に限界があります。それよりも支援の担い手を育成するようなプラグラムをつくりパッケージ化すると、他の地域でも使えるような事業モデルとなり、将来的な受益者の拡大につながり、強いては社会課題の解決の一助を担うことになります。
★助成金を獲得することはゴールではない
「助成金」を活用して団体の中で継続的に実施できるような仕組みを作り、事業実施の経験やノウハウを提供し、地域や全国へ公益事業として成果を還元する、つまり事業の成果を「公益から広益」への視点で考える必要であり、「助成金事業の構成を考えること」は団体の成長ロジックを考えることでもあります。それが講座の最初にお話をしていただいた「助成金=生きたお金」にするということでした。
【アンケートから】
「助成金は、それを使うことで自分を発展させるもの」という考えは元々あったが、それを出資側(審査担当者)も求めているということが分かり、よかった。」
「助成金申請の基本的な考え方の学習ができた。時代を感じた。この時代に合う考え方と活動のスタイルについても改めて考え、また団体の中で話し合っていきたいと思う。」
「助成金のリアルな書き方、活動~運用の意識の持ち方など、考えていなかったので意識改革できましたので勉強します。」
「助成金審査側の申請書の見方(どのような視点)がとても良くわかりました。(話し方が上手く、とても分かりやすかったです)」
「仕組みづくりの大切さ。助成金申請に取り組むことで事業の見直し、深化できること。資金源のネットワークを資産として活かす。」
「助成金の申請書に思っていたモヤモヤしたものがかなりすっきりしたように思えます。次の申請時の大きな参考になりました。」
「助成金だけでなく、団体としての活動のあり方も再確認できました。」
「自分の中にあるイメージや考え方をリセットしてみようと思いました。視野がせまくなっていたので、もっと周りにあたえる影響など、広くみていきたいと思います。」
<講師紹介>
山田泰久さん
NPO法人CANPANセンター 代表理事
群馬県高崎市出身、慶應義塾大学文学部卒(フランス文学専攻)。
1996年日本財団に入会。2014年4月、日本財団からNPO法人CANPANセンターに転籍出向。日本財団とCANPANセンターが合同で実施する、市民、NPO、企業などの活動を支援し、連携を促進するソーシャルプロジェクト「日本財団CANPANプロジェクト」の企画責任者。
 主に、NPO×情報発信、ソーシャルメディア、オンライン寄付、助成金、IT・Web、ノウハウ、ネットワーク、出身地などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っている。

(C) 2022 公益財団法人かわさき市民活動センター 
市民活動推進事業