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実施報告「団体の活動を『見える化』する。」
【第10回パワーアップセミナー】
「団体の活動を『見える化』する。」
開催日時:2018年3月10日(土)午後1時半~4時半開催
会場:かわさき市民活動センター 会議室
参加者:18名
講師:認定NPO法人 藤沢市市民活動推進連絡会副理事長・事務局長 ・協働コーディネーター
手塚明美さん
29年度の最後を飾る第10回パワーアップセミナーのテーマは「団体の活動を見える化する。」です。
市民活動は、団体の「中にいても」「外からも」見えにくい側面があります。その要因の1つとして、自分たちの活動の目的が「誰のために」「何のために」行っているかの理解が団体内で一致していなかったり、自分たちはわかっているつもりでも「外」に対して伝わってなかったりすることがあります。
自分たちの活動を整理して活動を「見える化」をすることは、団体内の風通しがよくなり、対外的にも効果的に「自分たちの活動を伝える」ことにつながります。
講師には、各地で講師としても活躍されている認定NPO法人 藤沢市市民活動推進連絡会副理事長・事務局長 ・協働コーディネーターの手塚明美さんをお迎えして、「見える化」の極意と意義を指南していただきました。
最初に、目の前のA4の紙を4つに折る作業をしました。手塚さんから折り方の指示はなかったので、人によって折り方が異なる結果となりました。つまり、「紙を4つに折ってください」という一見単純な依頼でも、具体的に「どう折ってほしいか」をきちんと伝えないと、人によって受け取り方が異なるという実証からセミナーは始まりました。
首から下げている名前フォルダー1つとっても、下げる位置によっては机に座ってしまうと隠れてしまい、自分は「名前を見せているつもり」でも相手には「見えなくなって」しまいます。活動も同じです。「何を誰に見せるのか」「何のために見せるのか」ということを意識する必要があります。
Step1「見える化」とは
★「見えていないのはだれ」
市民活動は任意団体や法人など色々な形態がありますが、生計を得るための労働とは異なり、そこで活動している人は、基本的に「お金」ではなく「想い」でつながっている関係にあります。「想い」は目に見えにくいので、その関係は切れやすく、逆に切りたくても切れないこともあります。従って、営利団体よりも、非営利団体の運営・維持の方が難しいといえます。
活動のカナメ(要)となる「認知」「理解」「共感」は団体の中に必要なことですが、活動のササエ(支え)の「支援」「満足」「継続」については、外に向けて必要なことです。つまり「誰に活動を見せるのか」を意識しなくてはなりません。
ここで、手塚さんが持参したボランティア募集のリーフレットに掲載されている20団体から、自分が参加したい団体を見つけ、なぜそこを選んだかについてのグループワークを行いました。その後、グループごとになぜその団体を選んだかを発表しました。
主な選択理由として「経験がある」「活動内容が想像できた」「楽しそう」「メリットがわかった」「自分にあっていそう」「キャッチーな言葉」「アクセスしやすい」などがあげられ、記事のどの部分からそのことが見て取れたか、の質問が手塚さんからありました。
このうちポイントになるキーワードが、「活動内容が想像できた」「メリットがわかった」「キャッチーな言葉」だそうです。これらは、団体のことを知らない人が関心を持ったということであり、活動が「相手に伝わった」ことを意味している、との説明がありました。
掲載記事は、1団体154文字まで、3cm×3cmの写真、別途団体名と問い合わせ先で構成されています。同じ条件のボランティア募集の記事でも、情報量は団体ごとに異なります。どんな相手に団体の「何を見せるのか」を意識して掲載情報を考える必要があるとの説明がありました。
団体の活動を取り巻く関係者は、活動による「受益者」、活動を支援する「支援者」がおり、活動の資金提供者も「会員」(会費)「行政」「企業」「団体」(助成金・補助金など)、「企業・個人」(寄付)など、様々な提供者がいます。共感し支援してくれる個人・団体・企業が多くなればなるほど、任意団体・NPOの基礎的な資金力は高まります。
寄付は単発的なものですが、活動に共感してくれた人の思いが寄付という形で表れたものです。自分たちの活動を「見える化」することが支援につながるので、リーフレット1つを例にとっても「誰に何を見せるのか」を意識する必要があります。
ここで団体の活動を見える化の1つとして、「防犯ボランティア活動」についてのデータをグラフや数値化した事例紹介がありました。グラフや数字で表すことは活動の「見える化」です。情報を「見える化」することで、対外的には活動の効果や意義を明確に伝え、団体内では、ボランティア参加者の声を数値化することで今後の検討事項が明確化され、情報を共有することができます。
Step2見せるコンテンツ
「何を見せるのか」
見せる情報の種類は、会員募集、ボランティア募集、団体紹介(メンバー・活動・ビジョン)、年次活動報告、決算報告、活動計画、予算書、イベント情報、開催予告、イベント開催報告、など様々です。
外に向かって活動を伝えるときは、①組織の概要、②解決したい課題、③事業や活動の内容、④目指す社会、の4つを見せる必要があります。このうち、②と③だけを見せて、④が不足している団体が多くみられるため、人に活動の意義を伝えるときは、①から④までのストーリーを作らないと人に伝わらないとのお話がありました。
そのためには、①自分たちは何をしたいのか(活動の目的)、②誰のため(何のため)の活動なのか(活動の対象) ③自分たちの強み ④わかってもらいたいこと ⑤活動の成果・効果 ⑥組織の課題は? の5項目について自分たちのことを知ることが必要です。
★活動のたな卸し
組織内外の関係については、ポジショニング図を作成して把握するとわかりやすいそうです。
ここで「未来への想い」というポジショニングマップを活用して、自分たちの今と未来の立ち位置を確認するワークに入りました。手塚さんが、団体に所属している受講生1人ひとりに、現在の団体の規模(大・小)と動エリア(狭い・広い)を聴き、白板のポジショニングマップに点を付けて行きました。併せて5年後どうなっていたいかを聴き、その点を線で繋げました。
「未来への想い」は団体の将来設計であり、仲間と一緒に中長期の目標を考え、団体の未来への想いとして共有し、外に見せることが重要です。目標を達成するためには、前述の5項目のうち、①活動の目的 ②具体的な活動 ③成果や効果、について整理して人に伝える工夫をするよう意識するとのお話がありました。
団体内では、会議の「見える化」も重要です。会議がつまらなかったり、自分がいなくても問題ないと感じてしまうのは、「見せる」会議になっていないからです。最初に、何のための会議か種類や手法などスタイルを決める必要があります。会議は90分で終えないと集中力を欠くそうです。会議は事前準備が大切で、会議の目的にそって90分のストーリーとゴールのイメージを作り、会議の開始時にゴールを伝えることが肝心で、それが出席者共通の目標になるとのお話がありました。
会議を進行するうえで重要なのは、「発言者と発言の分離」であり、出席者の意見は平等に扱うことがポイントです。会議終了後の議事録作成し参加者・関係者で共有することも、会議の「見える化」の1つです。
また、写真を含め活動資料や必要経費など団体の情報は自分で保存せずに、1か所にまとめ、誰でもいつでも活用できるように普段から意識します。これらの資料は報告書を作成や、外へのPRにも活用できます。
★みればわかる
企業の目指すビジョンや、企業の存在そのものをたった一文で表すのが「企業キャッチコピー」です。
「誰に」「何を」「どのように」提供するのかといった観点から、多くの時間をかけて検討がなされ、作成しています。自分たちの団体について「200文字の見える化」してみましょう、との提案がありました。活動を伝えたい相手のターゲットを絞り、何をどのように伝えたら効果的か、時には社会情勢を反映した言葉を駆使し、中学生でも理解できるストーリーのあるワンフレーズを考え声にだして読んでみます。200文字は30~40秒で読めるそうです。ポイントは「わかりやすさが共感を生む」ということにあります。外に「見せる」ためには、見た人の気持ちが揺れこちら側に向くよう、働きかけることが大切です。
つまり、こちらが「見せたいもの」と相手が「見たいもの」を考え、最も効果的に考えることを日頃から意識しましょうと、講座の締めくくりの言葉を頂きました。
【アンケートから】
「ワークを通じて「見える化」をなぜしなければいけないのかが腑に落ちた」
「とても「目的」が分かりやすかったです。すぐにやれることたくさんありました。タイムリーすぎて、こわかったです!!」
「議事録の必要性から、しっかりした団体にできる一歩。ボランティア会員のマネジメント等勉強できました」
「団体の主旨等を書いたものを作っておく。例えを使ってわかりやすく。ボランティアメンバーには共通した情報を渡す」
「活動として、見せているつもりでも視点を変えて考える、改めて見直してみる等、できることが見えてきた」
「市民グループの活動を広く知ってもらい、共感を得てもらい、賛同者を増やしたい。ゆくゆくは行政の誤りを正していきたい」
「学べたことは多いのですが、とくに活動の成果を効果的に見せることの大切さを再認識できた」
<講師紹介>
藤沢市をはじめ、神奈川県及び他都市の審議会や委員会、官民問わず、補助金・助成金の審査員を務めています。
本年度より、大学の非常勤講師として、ボランティアを通じた若者の人材育成事業を手掛けています。どの活動も、市民目線を軸に、伸びようとする目を見守る温かさとおおらかさにあふれています。