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U50   第20回 佐藤 由紀さん

アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。

佐藤 由紀 さんプロフィール

佐藤由紀さん

ハイパー顔ハメクリエイター 
中原区在住

「顔ハメパネル」とは

佐藤由紀さん

よく「顔出し看板」とか「等身大パネル」などと言って、観光地やレジャー施設に記念写真用に設置されていますよね。大人から子どもまで、楽しめるアイテムです。キャラクターが描かれた板に顔の部分が繰り抜いてあり、1人がその穴から顔を出し、それをもう1人が撮影するという和気あいあいとしたツールです。

私の場合は、顔をハメる板は、持ち運び便利なスケッチブックの大きさのパネルで、その他の道具も、プロッキーマジックと粉状の画材のパステルだけです。いつでもどこでも、この3種は持ち歩いています。

その「顔ハメパネル」を通しての活動とは

スイカのパネルに子どもが顔を出している写真

きっかけは、2015年に武蔵小杉に大規模な商業施設「グランツリー」ができて、新丸子商店街から客足が遠のいたことです。2013年に開いた私の雑貨屋も打撃を受けました。そんなとき、たまたま夫が「こすぎの大学」で川崎市内の地産の野菜をいかに広めるかを勉強していました。家族で畑に行くようになって「この珍しくて新鮮な野菜たちがなぜ、スーパーに売ってないのか。ぜひとも、マルシェを立ち上げて広めたい」と自分の店から発信しようと考えたのです。

うちの店頭に野菜を置くと同時に、隣りのカフェのオーナーも巻き込んで、カフェのメニューにその野菜料理をお願いしました。宣伝費用がかけられないので、フェイスブックやSNSでお客さんと一緒に拡散することを思いつきました。野菜の宣伝には、ビジュアル的なインパクトが大事だと、地元野菜をモチーフにした顔ハメパネルを作っておき、訪れたお客さんに顔をハメた写真で宣伝してもらうと「面白い!笑ってしまった!」と大好評でした。

そのマルシェの活動とともに「小杉てづくり市」というイベントも実現させました。もともと私はハンドメイドの作家さんたちを応援していきたいという想いがありましたから、ハンドメイドフェスティバルをやりたいという構想を温めていました。そして、2017年6月に地元の餅つき大会とコラボして開催すると、想像以上の集客がありました。同時に中原工房の協力のもと、「木製カメラを作ろう」というワークショップを開催。その完成品と一緒にカメラの顔ハメパネルで撮影したこともフェスを盛り上げました。初めは恥ずかしがっていた人々も、そのうち慣れてくると「撮ってよ、撮ってよ!」とアピールですよ(笑)。地域の方から「自分たちの街に、こういうイベントは無かった。こんなに楽しいなら、引き続き開いてほしい」との声が多数聞かれました。

ワークショップを開いて感じることは

顔ハメ絵日記から顔を出している子どもたちの写真

ワークショップからどんどん活動を外に出て広めていきたいと、現在までいろいろと続けています。今年の夏には、小学生と「折りたたみ式・顔ハメ絵日記」を作りました。旅行や釣りなどの夏休みの思い出を絵に描くだけでなく、そこに自分の顔をハメて自分でプレゼンするのが目的です。

子どもたちは、プレゼンのときに最初は緊張していても、自分を観る相手の驚きや笑いによって、自分の作品に自信を持ったようでした。これは、彼らの自己表現のこれからの可能性に繋がると思いましたね。聞くところによると、夏休みの宿題として提出したら先生たちが爆笑したらしいです(笑)。

今後、この顔ハメパネルを自己紹介プレゼンや、初めましての名刺代わりの挨拶に使ったりすれば、場がなごみ、人と人との距離が近づくのではないかと思っています。また、元看護師の私としては、病院での検査時など緊張する場面に「顔ハメパネル」を使用して説明をしたら、患者さんの緊張がほぐれてリラックスできるのではとも思います。

店をたたみ、本格的な活動へ

競馬の日のパネル。馬の顔に女性が顔を出している写真。

時間があると、いつもダイニングテーブルで制作している私ですが、これだけ自分の活動に集中できるのは、自分のライフスタイルを一本に絞ったからです。雑貨屋の運営と自分の顔ハメパネル活動の両立が難しくなり、2019年5月に店を閉め、それからは本格的に活動しています。「人がやってないことを貫こう」という信念と「中途半端にやらない」という想いで決断したことですが、その頃から急に新聞やマスコミに注目されるようになるから不思議なものです。現在色々な方面からのワークショップの問い合わせなども多いですね。

毎日自分に課しているのは、「今日は何の日?」というアプリ・カレンダーを使ってのパネル作りです。祭日の大きな記念日でなくても、「競馬の日」や「カレーの日」等、承認されている記念日は、驚くほど毎日あるのです。何かの記念日に私からサプライズで顔ハメパネルをプレゼントすると、とても喜ばれ、クリエイター冥利に尽きます。この日々のパネル作りはイベントにも役立ちます。いつも大事にしているのは、顔をハメるのは私ではなく相手であり、その相手の目線を大切にするということです。

私が描いたパネルが私の手から離れ、相手の顔をハメてからも、その先があります。顔をハメた人とそれを撮る人との2人の共同作業が待っているのです。本当にやりがいのある活動です。

最後にメッセージを

パネル製作中の佐藤由紀さん

小さいときから絵が苦手だったし、また元職は絵とは関係の無い看護師だった私がこういう活動を始めるとは、人生とは何が転機となるかわからないものですね。顔ハメの可能性をもっと広めたいという気持ちが強いせいか、日常ふと見る景色や物に「ここに穴が空いたら」と考えてしまいます。好きな言葉が「当たり前を疑え!」ですから(笑)。趣味が仕事になったようで本当に幸せです。夫も娘も応援してくれています。特に娘は撮られ慣れしているのか、顔ハメ写真の表情はとてもユニークです。しかしながら、娘のダメだしも厳しいですよ。

これから何か活動をスタートする方々には、「走りながら考えてみるのもあり!」と背中を押したいですね。全部決めてからだとうまくいかないことが多いです。私のスタートも、パネルとマジック1本からのスタートでしたから。

近いうちに、顔ハメワークショップを計画中です。ぜひトライして、一緒に笑いましょう。


2019年10月29日取材 レポーター 町田香子

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05053626084

次回のエースは大坂亮志(おおさかりょうじ)さんです。

大坂亮志(おおさかりょうじ)さんへ一言

佐藤由紀さん

大坂さんのおかげで、「商店街」というもののイメージがガラリと変わりました。「小杉てづくり市」では、大坂さんのフットワークの軽さと、フレンドリーさと、優しさをひしひしと感じました。最初はなんとなく怖そうで、声をかけるのに勇気がいったのですが(笑)、見た目のイメージとは全然違って、夫をはじめ小杉の皆さんが大坂さんを慕っているのがよくわかりました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

バトンを受け継いで 佐藤 由紀 さんへ一言

大坂亮志さん

最近テレビで取材されている由紀さんのお姿を拝見すると、今やまさに「ときの人」ですね。活動に専念されたこと、大正解だったと思います。これからも、全国的に羽ばたいてください。そして、僕らのことを忘れないでくださいね!

(C) 2022 公益財団法人かわさき市民活動センター 
市民活動推進事業