U50 第57回 西 智弘さん
アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。
西 智弘 さんプロフィール
一般社団法人プラスケア 代表理事
川崎市立井田病院腫瘍内科部長
中原区在住
代表の西 智弘さん(医師)は、2012年から川崎にて、腫瘍内科、緩和ケア、在宅ケアをトータルで診療。2017年に「暮らしの保健室」や「社会的処方研究所」を運営する一般社団法人プラスケアを設立。地域で市民と医療者が気軽につながり支え合う関係を築いています。
今回はプラスケア代表理事の西 智弘さんに伺いました。
いつでも私たちがいる、その場所を
病院に行くほどでも…といった不調から、どこに相談すればいいか迷う健康上の悩みなどの相談にのる「暮らしの保健室」。全国の自治体で地域性を反映しながら自発的に派生し、多くは医療関係者が運営する取組です。
一般社団法人プラスケア(以降プラスケア)による「暮らしの保健室」は、2017年から市内のあちらこちらで開催。現在は健康相談を軸に、グリーフケア、お灸セルフケア、化粧外来も連動して内容の幅が広がっています。そしてついに、2023年5月にJR南武線・武蔵新城駅近くに拠点を構えました。
――「西さん、以前よりずっと暮らしの保健室が浸透してきた、という印象ですね」
――「いえ、まだまだ…。私たちの存在は知らない人がほとんどで、必要な人にそこまで届いていないと思っています」
定期開催は好評でも、その場限りのイベントだと思われたり相談者のタイミングが合わなかったり。週5日開催したい。自分たちのアイデアをスピード感をもって実行したい。開催を重ねるうちに、「自分たちの拠点が欲しいよね」とスタッフ全員が考えるようになったといいます。
新拠点
JR武蔵新城ほど近くの一画は、コワーキングスペースやカフェとも緩やかにつながり、賑わい/働きかた/暮らしかた/出会いなど、より良い地域づくりへのコンセプトで練られている場所です。この建築計画が入居の決め手だったのでしょうか。
――「そうではなかったのですが、いい場所が見つかって良かったです」
いざ物件を探すことになった段階で、この計画を思い出し、「まだ空きがあるかな」と西さんが問い合わせたそうです。ちょっとしたタイミングの良さも手伝って、新拠点入居へと結びつきました。
西さんが着目したのは「駅近、路面」。駅からは平坦でわずか徒歩2分。閑静ですが入りやすい雰囲気は、路面・1階の強み。建物前に植栽とベンチが配され、歩行者の視線を柔らかく分散します。明るい室内に丸テーブルを配置。スタッフが淹れてくれるスペシャルティ・コーヒーも楽しめます。「気軽に立ち寄ってリラックスして話せるように」…スタッフの思いや配慮が伝わってきました。階段上には半クローズドの談話スペースも用意されています。
満を持して5月に始動した新拠点での「暮らしの保健室」には、2名のスタッフが常駐します。
西さんの視点
現役医師、それも、「その人らしい生きかた」という視点で「病」を考え、緩和ケアのありかたを前進させた著名な医師である西さんの取組とあって、様々なメディアがプラスケアを取り上げ、また注目し続けています。
――「西さんはお医者さんですので医療の視点や側面で地域を見てくれていますが、それだけでなく個人としての視点からも、このまちを考えているのでしょうか」
――「うーん…ひとりの人として、でしょうね。私も地域に暮らす人々のひとりなのですから。まちのひとりであり医療知識を持っている、という視点ですね」
地域での人と人のつながりを活性化させたいと、西さんは中原区SDCでも重要なパートを担っています。
――「もともと西さんは、住人同士の関係が密接な地域や環境で育ったのですか?」
――「いえいえ、自分が育った環境や経験は関係がないですね。川崎に越してきて、中原区で働くようになって、このまちに可能性を感じたことが起点です」
動画配信「社会的処方チャンネル」
西さんの著書のタイトルでもある「社会的処方」。本はもちろん講演でも、「社会的処方」を基にした取組が事例を用いて分かりやすく語られます。そのお話を視聴できる【YouTube】社会的処方チャンネルが、隔週更新で公開されています。
――「動画がわかりやすいですね! 講演を拝見して、西さんのお話を聞く機会がもっとあればいいな、と思っていたので…」
――「見ましたか(笑)。おーい勝山君、動画見てるって。良かったねー!」
動画はスタッフの勝山陽太さん(ソーシャルワーカー/広報)が手掛けています。退屈させない演出も満載。最新の動画は「どこでも医者に相談できるドクターメールとは?!」(2023年5月20日公開、取材時点)。SNSではコミック形式でスタッフの日々を紹介。フットワークよく、医療と人びとの間の垣根を払うチャレンジを取り入れています!
社会的処方チャンネル
https://www.youtube.com/@syakaitekisyohou
これから、ここから
健康相談だけが「暮らしの保健室」なのではありません。直接使う人だけでなく、みんなの選択肢の一つとして「ここが、公的機関などと並ぶ場所になるように」という西さん。
拠点を地盤に、多方面との連携が増えることに期待が高まります。
――「いままでも、私たちのところへは市民団体や事業者も訪れてきました。新たに “自分たちはここにいます”と言える場所ができたので、企画や開催がもっと活発になるでしょう。また、"知り合いがこんなことしてるんだけど…"と気軽に話にきて、別の何かにつながっていく。そんな〈まちの動き〉が始まり波及する流れが、ここから増えて欲しいですね」
――「あのう、ほんとに気軽に寄ってもいいんですか?」
――「もちろん、もちろん。先日も買い物帰りのおばちゃんが、“ちょっと話に来たの”と言いながら寄っていかれたばかりです(笑)」
KAWASAKI「暮らしの保健室」についての詳細は、プラスケアのホームページでご覧になれます。
アクセスや開催日カレンダーのほか、新しい取組などの情報が随時公開中。
SNS、動画もリンクされています。
(取材日:2023年5月20日 担当:広滝)
お問い合わせ
プラスケアのホームページへのリンク
https://www.kosugipluscare.com/社会的処方チャンネルへのリンク
https://www.youtube.com/@syakaitekisyohou一般社団法人プラスケア
川崎市中原区上新城2-7-5セシーズイシイ23 A101
MAIL:info@kosugipluscare.com
TEL:044-400-2408(お電話は月・水~土10時~16時)/ FAX:044-400-2409
https://www.kosugipluscare.com/
次回のエースは中村若菜さんです。