U50 第58回 中村若菜さん
アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。
中村若菜 さんプロフィール
はなうた図工室代表
特定非営利活動法人ダンスラボラトリー理事
一般社団法人日本臨床化粧療法士協会理事
高津区在住
中村さんは2016年に家族で川崎市に転入。高津区に自宅を建てたことで川崎が地元になった実感も湧いたそうです。
市民活動との出会いは、2018年、溝口のnokuticaで開催していた「暮らしの保健室」への訪問がきっかけでした。仕事で地域医療の取組に興味が移行した時期でもあり、セルフケアで歩く力を維持する取組「足育クラブ」をスタートしてコロナ前まで開催しました。
その後も、他団体への参加や団体立ち上げなど、幅広く活発にアクションを広げています。
はなうた図工室で支援者を支援
中村さんは、2020年10月に「はなうた図工室」*を立ち上げました。石井麗子さんとともに共同で代表を務めます。障がいのある当事者を支援する人たちが、有益かつ必要な情報を共有し、学びを高め、互いに意見を取り入れる場です。
「はなうたアート」とは、手近で安価な材料で、障がいのあるなしにかかわらず、誰もが楽しめるように考えられたアート制作メソッドです。子ども食堂「まきまきキッチン」とコラボレートして、訪れたみんながアートづくりを楽しむ機会を提供したり、なかはら障害福祉施設ひらまでは、ワークショップを開催しています。
――「アート制作の実践が主な目的ではないんですね」
――「はい。材料や方法も必要な情報です。例えば、支援者や教育者がその情報を知らなければ、周辺の当事者が制作する機会がありません。情報や学びをシェアし、支援者の選択肢を増やしたいと活動しています」
日々の挑戦から培われる力、ダンスラボラトリー
ダンスを通じて「障がい」という垣根をなくしたい。特定非営利活動法人ダンスラボラトリーは、2014年から活動を続け、障がいのある子どもたちが参加するダンスワークショップや定例教室を行っています。
中村さんは、まちづくりイベントで代表理事の園部さんと出会いました。東京五輪前で公演が活発な時期に、参加者や出演者の健康を保ちたいと団体から依頼されメディカルサポートに携わり、その後、理事に就任しました。
――「力強く活動を続け、評価も高いNPO法人ですね」
――「私もパワーを貰っています。間近で彼らを見ることが、自分に良い影響を与えていると感じます。ダンス自体も感動しますが、彼らの素晴らしさは自律性です」
――「自律性とは?」
――「障がい児は周りの大人の表情を読み取って、自分は困っている、自分はこう思っている、ということを伝えられないことが多いのです。支援があれば出来ることを、やらせていない場合もあります。ダンスラボラトリーに参加しているみんなは、周囲に自分の意思をどんどん伝えます。意思を表現出来るんです。ダンスからの学びに加えて、公演稽古の後には反省会、クラス前後の挨拶や御礼といったことを日頃から実践しているからですね」
見た目=アピアランスの悩みにアクション
一般社団法人日本臨床化粧療法士協会(河村しおり代表理事)は、学術研究に基づいた臨床化粧療法の普及、啓蒙活動、臨床化粧療法士® **の育成及び研鑽を目的とする組織です。中村さんはこの組織の理事も務めています。
――「見た目の悩みとは、どんなことですか」
――「病気や手術に関連する症状に限らず、肌や髪のことが心の重荷になることもあります。悩みは人それぞれで、私は見た目をもっと幅広く捉えています。私には自宅療養患者の外出支援をしていたキャリアがあるのですが、患者さんたちは長い間楽な衣服で人前に出ず過ごし、その後やっと外出できるという時に、「あれ?わたしどんな格好をすればいいの…」と身だしなみのブランクに気づき、戸惑われます。それも見た目の一例だと思います」
――「課題に対しての協会のアクションは?」
――「メーク方法やウイッグ、市販の化粧品の特性や機能などの情報を正しく伝えられる人材を育成しています。悩んでいる人には、個別相談の場も用意しています」
――「河村代表は、川崎では任意団体“アピラボかわさき”の活動をしていますね」
――「 “アピラボかわさき”は、河村代表がひとりの臨床化粧療法士®として相談会を開いています。私は運営のお手伝いをしたことがありますが、悩みに対して何をどう使えばいいのかわからない人は、色々試して知識や選択肢を増やせますよ」
人生を彩るものはたくさんある
医療関連の資格を持ち仕事をしてきた中村さんは、選択肢を増やせば、何か一つを失ったとしても可能性が挫折することなく継続する、生き方を選ぶことができると考えています。
――「選択肢一つでは足りない?」
――「その一つが出来なくなった時、ぽきっと折れて浮上できない人もいます。選択肢を増やすことは、ベストでなくても自分にフィットするものを増やすこと、一張羅の晴れ着じゃなくても似合うものはたくさんある!と、私は思います」
――「中村さんが更に始めてみたいことはありますか?」
――「今までは手当たり次第、混沌と楽しみながら色々やってきました。最近ようやく、私は自分と自分が大切に思う人たちの選択肢を増やす活動をしています、と言葉にできるようになりました。いまの活動は今後もしっかり継続し、プラスして就労支援をしてみたい。医療の現場で多くの患者さんに出会ってお話を聞き、その人生に関わる機会に恵まれて、障がい者の就労支援に対する興味につながりました。そして現在、色々な挑戦からの出会いによって、全般を対象とした就労支援への関りを思い描き、形になりつつあります」
――「まさに花が咲き、実となりましたね。最後に、中村さんの地元となった川崎はどんなまちだと思いますか」
――「都市なのに互助意識が高いですね。良い意味でお節介。裏口に鍵を掛けず、お味噌汁が余ったからどうぞ~みたいな関係が築ける、良い意味で特別なまちだと思います」
――「ありがとうございました」
2023年6月20日取材(広滝)
*はなうた図工室とは、超福祉の学校プロジェクト(ピープルデザイン研空所主催/文部科学省共催)から生まれた、共生社会実現に向けた生涯学習プロジェクトの一つです。
**臨床化粧療法士®は、(一社)臨床化粧療法士協会の登録商標です。
お問い合わせ
はなうた図工室
https://hanauta-zukou.localinfo.jp/特定非営利活動法人ダンスラボラトリー
https://dancelaboratory-japan.com/一般社団法人日本臨床化粧療法士協会
https://japanclinical-cta.org/次回のエースは田中愛章(たなか あきちか)さんです。