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U50   第59回 田中章愛さん

アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。

田中 章愛 さんプロフィール

手にロボットトイを持つ田中代表

田中 章愛 (たなか・あきちか)さん
CoderDojo武蔵小杉 代表
ゲーム機メーカー勤務・ロボットトイ開発者
中原区在住

使用教材やロボットトイなどの写真

CoderDojo(コーダードージョー)とは、世界的なプログラミングクラブのボランティア活動で、「憲章」に則れば各道場の開催スタイルは自由。大人はボランティアで活動支援や運営にあたり、会費の徴収はなく任意の募金で運営されます。

田中さんと有志のメンバーがCoderDojo武蔵小杉を発足して1年数カ月(取材当時)。プログラミング言語Scratchやロボットトイtoioなどを使い、子ども自身が興味のあることに挑戦します。プログラミングのコツの紹介やクイズもあり、田中さんも「あきちか」と平仮名の名札を下げ、大人も子どもも一体となって活気ある開催を続けています。「道場」といっても毎月通う必要はなく、サイトから申し込めば単発で誰でも気軽に参加できます。ほぼ月に1~2回の開催です。


※CoderDojo武蔵小杉のサイトは最下段に記載しています。

ものづくりに熱中、田中さんの子ども時代

座って笑顔の田中さんの写真

現役のロボットエンジニアの田中さんは、元、高専ロボコン*の出場者です。子どもの頃から工作に親しみ、身近なものを分解し組み立ててはその仕組みを知るのが大好きで、発明した作品は受賞するほどでした。まだ珍しかったPCを使ってBASIC*でゲームのプログラムを書いたこともあります。

夏休みの工作では毎年ロボット作りに大熱中。ホームセンターや模型店で部品を集め、図書館で借りた本を参考にリモコン操作ロボットを自作していましたが、「はやく自分でスターウォーズのR2-D2みたいな自律ロボットを作りたい!」と思い続けていました。テレビで高専ロボコンを見たときの鮮烈な印象も手伝い、ものづくりをもっと勉強したい、ロボコンにも出場したいと地元の佐世保高専に進学し、そして念願の高専ロボコンでの活躍を果たしました。現在まで数々のロボットを開発しています。

田中 「高専進学までは、独学で調べて工夫を重ねていました。CoderDojoみたいにワイワイ友達と、というわけにいかず、家で黙々と独りで作っていました(笑)。夏休み明けに友達みんなが作品を見て驚いてくれるのが嬉しかったですね!」

日本のモノづくりとロボコン

プログラミング作業中の大人たちの写真

「自分たちもやってみたい!」と子どもたちの希望を受けて、小学生ロボコン*への挑戦が始まりました。道場は更に熱気に溢れています。友達と一緒だと楽しいし、まねたり教え合ったり、良い刺激を与え合っています。多様な技術が同時進化している現代では、ロボコン目指して一気につくりあげると幅広く学びが高まります。また、総合力・統合力はこうした経験を通さなければ身につきにくいと田中さんは言います。道場は子どもたちにむけてそのチャンスを広げています。

そして、大人も傍観するのではなく一緒に学び活動するのがCoderDojo! 子どもが頑張る姿に刺激を受けて社会人向けのロボコンに挑戦します。実際の市街地を自律走行する技術チャレンジ「つくばチャレンジ2023」*に向けてスタートを切りました。

GPSやレーザーによって周囲の状況や位置を把握・判断して、障害物や通行者を避けながら走行するロボット(写真)を製作中です。「完走が目標ですが、これがなかなか難しいんですよ」という田中さんの眼が楽しそうに輝きます。聞くと、身近な配膳や警備ロボット等の製品も基本的な仕組みや構成は同じなのだとか。「これを個人がつくれる時代になったことは確かに驚くべきことかもしれませんね」と笑顔で答えてくれましたが、ロボコンを目指すということは、ものづくりを目指すうえでとても重要な意味を持っているそうです。

田中 「日本のものづくりは、ロボコンからの影響がとても大きいんですよ。ロボコンの生みの親である東京工業大学の森政弘先生の、勝ち負けではなくそこに至る工夫を重視する気風は、私自身を含めて、多くの開発者や研究者に受け継がれています」


大人が制作中のロボットの写真

テクノロジーを役立てたい思い

PCでデジタルのお絵かきや着せ替えを楽しむ女の子たちの写真

田中さんは、数多くの「仕事の枠を越えて活躍するカッコイイ先輩たち」に出会ってきました。彼らから大きな影響を受け、「自分もそんなふうになりたいなと憧れました」と、笑顔で話します。世界的なCoderDojoの活動については以前から知っていて、「いつか自分もやってみたいな…」と、ふんわりとした思いを胸に抱いていました。

コロナ流行で自宅に籠って過ごしていた時期のこと、「プログラミングを友だちと一緒にやりたい」と言う自身の子どもたちを見て、思いは急速に具体化します。

既に別の場所で知人が開いていた道場に何度か参加して自分の開催イメージを固めました。利用可能な、活動センターや市民館といった公共スペースが近所にあることも好都合でした。小学生の頃に参加した地元の科学館の発明教室での思い出が、道場の原風景になったのかもしれません。

田中 「CoderDojo武蔵小杉を立ち上げるときは、同じ会社や技術コミュニティの仲間たちが「手伝うよ」と集まってくれて、そのおかげで開催実現に直結しました。現在も大勢が参加して道場を支えてくれています。皆、テクノロジーを地域とコミュニティに役立てたいという思いを持っています」

コーダードージョー開催で大勢の参加者がモニターを見ている写真

創造する喜びを感じよう!

田中さんと男性が自律ロボットを挟んで立つ屋外の写真

田中さんが学生時代にロボット同様夢中になったという音楽のジャズでは、集まったメンバーが曲のコード進行に沿って即興(アドリブ)で演奏します。テクニックや個性だけでなく協調や共鳴、そしてハプニングも含めて臨機応変に楽しむ心が必要です。音楽と同様に、仲間と刺激しあって創造する喜びを、道場でも感じてもらいたいと思っています。

田中 「ジャズの、ゆるいルールを守りながらも、互いにリスペクトし触発されながらオリジナリティを発揮して楽曲がその場ででき上がる、僕はこの感覚がとても好きなんです。同じように互いの影響で何かが出来上がっていく、そんな場になることを思い描いています」

道場を始めて、田中さん自身ここのところ、仕事以外の自分のためのロボットづくりから少し遠ざかっていたことに気づきました。こうした場は、むしろ自分のような親や大人にとって必要だと実感しています。

田中 「子どもに楽しいと感じてもらうには、大人が楽しんでいる姿を見せることが大切です。大人も子どもも楽しむオープンな交流の場として、引き続き地域に根差して等身大の活動を続けていくつもりです。そのうちに、一度でもここに来たことがある子が、ものづくりは楽しいなと感じたり、将来自在にロボットやプログラミング・AIを使いこなすようになったら、嬉しいです」

作ったロボットを、並べた逆さの紙コップにむけて動かす女の子

*高専ロボコン:1988年に始まった「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」
*BASIC:初期のPCでよく使用されていたプログラミング言語
*小学生ロボコン:全国の小学生たちが知恵と技術を競い合うロボットコンテスト
*つくばチャレンジ:実環境における自律走行技術の進歩を目的として、研究者と地域が協力して行う、先端技術への挑戦と公開実験の場。大学研究室、研究機関、企業、個人、学生サークル、社会人サークルなどから、おおむね毎年50以上のチームが参加する。順位を付ける競争(コンテスト、コンペティション)とは考えず、課題達成の評価に順位は付けない。賞金もありません。

(取材日2023年7月9日:広滝)

お問い合わせ

CoderDojo武蔵小杉

https://coderdojo-musashikosugi.connpass.com/

ロボコン(オフィシャルサイト)

https://official-robocon.com/

田中さんの子ども時代のお話を詳しく読むことができます!“博士が子どもだったころ”Vol.5 ロボットエンジニア「田中章愛博士」

https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/blog/bl/pMLm0K1wPz/bp/pNDe8BpOLY/

次回のエースは須山智子さんです。

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