U50 第53回 大城英理子さん
アンダー50として、2018年から2024年3月まで、
50才未満の若手市民活動家へインタビューを重ねてきました。
「活動を始めたきっかけや思い」など、
62名それぞれの軌跡が
多くの方々へのエールになるよう願っています。
大城(おおき)英理子 さんプロフィール
こどものまちミニカワサキ実行委員会 代表
中原区在住
こどものまちミニカワサキは子ども達が中心になってまちを考え、子ども達だけのまちをつくり、運営するプログラム。
今年は2022年10月9日、10日、3年ぶりに対面開催されました。
実行委員会代表の大城英理子さんにお話をお聞きしました。
大城さんご自身のこと、ミニカワサキの活動にいたった経緯や活動への思いを聞かせて下さい。
もともと九州の出身で大学は長崎にいきました。当時COP3(京都府京都市で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議)直後ということもあり、学生の間でも環境活動が盛んになっていました。全国の学生仲間と環境分野の補助金でシンポジウムを開催したり各地の活動事例を見に行ったりして、同じ目的をもった学生同士がネットワークをつくって活動することの面白さを知りました。
また母が地域やPTAの活動をしていたので私もこうした活動をすることが自然で、市民活動へのハードルは(自分の中で)低かったですね。
武蔵小杉に住み始めて、近くに中原市民館や市民活動センターがあるのがすごいなあと思っていました。地縁が無い中で子育てをはじめたときに、まずは知り合いをつくることからでしょう、と思って中原市民館の乳幼児サークル「プレイセンターあそびの広場」(現在のプレイセンターかんがる~)に参加しました。今の活動に必要な人のつながりはこの頃からのネットワークも多いです。かわさき市民活動センターの助成金をいただいた活動は乳幼児サークル時代からはじまっています。
設計事務所でお仕事をされていたのですね?
設計事務所に勤めていましたが、設計ではなく環境アセスメント評価、企画提案書作成のほか、研修なども担当しました。その後、大規模都市開発のコンセプトデザインといった試行的プロジェクトに関わり、この頃はとにかく、まちをどうよくしていくか?をひたすら考えていました(笑)。
ただ、まちをつくっても上手く使ってくれる人や信頼できる「まちのパートナー」がいないと、いい案件として育っていかないと感じていたんです。私は建物をつくる側というよりは使う側が合っているなとこの頃から感じていました。
こどもが2人になったタイミングで多忙過ぎる設計事務所をやめて、保育園で2年間事務局の仕事をしていました。公共の広場や公園に親子でお散歩や外遊びにいく「森のようちえん」型の保育園で徹底的にパブリックスペースを使い倒すことを経験しました(笑)。ここでの仕事が終わるころ、「19歳以下の子どもがつくるまち、ミニヨコハマシティ」に出会いました。
学生時代の関心領域、仕事を通じた経験、ビジネスで実現できていない「まちで暮らす側がまちを使いやすい形で使っていきたい」という思い、さらにはまちの中で感じる孤独、子ども・子育ての視点から感じる疑問点が強くなっていって、「こどものまち」というのが、これから自分がやっていきたいことのヒントなる気がしたのです。
やってみてどうでしたか?
2018年に実際やりはじめてみて、かわさきは市民ネットワークの素地があるまちだと感じました。何か相談すると市民活動の知り合いがワッと集まって、活動場所を紹介してもらったり、パパ友ママ友みたいな人達がどんどん繋がっていったんです。生まれ育った九州ではこういかなかったと思います。
2018年からはじまったミニカワサキは全5回、2020年、2021年はオンライン開催になりました。今年は3年ぶりの対面開催でお店や市役所や税務署、ハローワークに投票など、実社会の仕組みがいろいろ組み込まれた「こどものまち」でした。 あの日の目指したことは何だったのでしょうか。
全体を通して言いたいことは、こどもの力を信じる、こどもの参画を進める、こどもがのびのび自分のやりたいことをできる機会をつくる、ということ。そのためには大人が口出ししないということですね。
そうですね、そう思います。2018年初回開催時に3つのグランドルール「本気で遊ぶ」「本気で支える」「本気で信じる」を決めました。大人が子どもを本気で信じる、本気で支えるということを今も変わらず実行しています。大人は子どもが全力でやれるように準備する、資金調達も含め奔走するという(笑)。
大人が大事なのですか?
もう一つ大事にしていることは、この理念を大人にも子どもにもしっかり伝えるということです。子どもがのびのびやるために大人が手をかけすぎない、口出ししないということもそうですし、それは同時に失敗も、危険もあるということです。子どももしっかりしないといけないのだ、と伝えてほしいし、親もそのことをわかってほしい。
こどもが大人になることを学ぶ場であり、親も子どもの成長を支えるとはどういうことかを学ぶ場だと思うのです。
これは(前述した)乳幼児サークルプレイセンターで提唱していることと同じです。子どもの成長を支えるというのは誰でも勝手にできるようになるわけではない。そのために、大人も親になるための勉強が必要だと思います。
今年の特徴はどんなところだったのでしょうか?
今年は2年間ずっと待ち望んでいた子達がやりたかったことを中心にしました。このイベントは思いが強い子じゃないと「やらされている」感じになってしまう。最初の頃は、親が子どものために良かれと思って申し込んでも、子どもがやる気がなかったり、お店が雑だったりということがありました。今年は、そういうことがないように、参加申込の時に、子どものまちへの思いを書いてもらいました。親御さんへの説明の機会もなるだけつくって、コミュニケーションを丁寧にとるようにしました。
今後やっていきたいことはありますか?
川崎市は子どもの権利条例があります。去年(2021年)は条例制定20周年を記念して川崎市で行われた子どもの権利のイベントの準備にかかわり、子どもに関する様々な団体のことを知ったり、繋がりをつくりました。
「子どものため」といいながら子どものためになっていない、子ども自身が判断していない、子どもがやりたいこと、本当はできるのにやらせてもらっていないことなどがまだまだあることにも気づき、勉強になりました。
市には、子どもの権利条例に基づいて「子ども会議」という仕組みがあるのですが、条例制定20年が経って、下火になっている地区も多いし、子ども会がなくなっている現状もあります。
せっかく子どもの活動が盛んな川崎市なので、市の関係部署とも連携しながら、子どもらしい課題や気づきが、遊びの中から出てくる「こどものまち」をやっていきたいと思っています。
もっと子どもたち自身が「こどものまち」の魅力を語って普及する機会を増やしたいと思っています。そして、規模を大きくするというよりは、いろいろな場所で小さいミニカワサキみたいな場を経験できるようになるといいんじゃないかなと思ってます。
今注目している人や活動はありますか?
若手の活動がもっと増えたらいいなと思っていて、かわさき若者会議とかいいなと思ってます。ちゃんと大人と関わって、支援してもらいながらやっているのがすごく面白いなと思って。私自身が学生の頃にやりたくてもできていなかった活動のやり方ができているのはすごいなと思っています。
今日はありがとうございました。今後の活動も楽しみにしています。
(取材担当:浅海 取材日2022年10月13日)